古着は「病原体の温床」になり得る?大学の微生物学者の指摘と正しい洗濯方法

古着ブームが広がる一方で、着用歴のある衣類には細菌やウイルスが残っている可能性があります。専門家の指摘と国内外の研究データから、リスクの実態と正しい洗濯方法を解説します。

古着市場の拡大と、見落とされがちな衛生リスク

古着とは、以前の所有者が着用した後に販売される衣料品のことです。国内のファッションリユース市場は拡大が続いており、矢野経済研究所の調査では2023年の国内ファッションリユース市場規模は小売金額ベースで1兆1,500億円(前年比113.9%)と推計されています(矢野経済研究所, 2024年)。世界的にも同様の傾向があり、ThredUpの「2026年版リセールレポート」によると、世界の中古衣料市場は2030年までに393億ドル規模に達し、アパレル市場全体の約2倍の速さで成長すると予測されています(ThredUp, 2026年)。

こうした古着人気の高まりの裏側で、大学の研究者から「古着は病原体の温床になっている可能性がある」という指摘が出ています。

レスター大学の臨床微生物学者が指摘する感染リスク

指摘しているのは、イギリス・レスター大学の臨床微生物学者、プリムローズ・フリーストーン氏です。フリーストーン氏によると、人の皮膚には細菌・真菌・ウイルスが自然に生息しており、これらは総称して「皮膚マイクロバイオーム」と呼ばれています。皮膚マイクロバイオームには、ブドウ球菌感染症を引き起こすブドウ球菌、レンサ球菌咽頭炎の原因となるレンサ球菌、カンジダ症を引き起こす真菌、ヒトパピローマウイルス(HPV)などが含まれます。

各人の皮膚マイクロバイオームはその人に適応しているため、ある人には無害でも別の人には感染症の原因になることがあります。衣類は着用中つねに皮膚と接触するため、これらの微生物が付着しやすい対象です。

古着屋で販売される衣類は、必ずしも事前にクリーニングされているとは限りません。そのため、元の所有者の皮膚マイクロバイオームに由来する細菌や、元の所有者が感染していた病原体が残っている可能性があります。

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衣類の上で病原体はどれくらい生きられるのか

過去の研究では、大腸菌・黄色ブドウ球菌・化膿レンサ球菌などの病原菌が、室温で保管された衣類の上で長期間生存することが確認されています。綿や混紡素材では最長90日、ポリエステル素材では200日以上生存した例が報告されています。湿度が高い環境ほど細菌は生き延びやすいため、古着は乾燥した環境で保管することが望まれます。

パキスタンの古着市場で販売されていた衣類を調べた研究では、サンプルの多くから枯草菌や黄色ブドウ球菌が検出されました。イランで行われた調査でも、皮膚感染症を引き起こす寄生虫が古着から見つかったと報告されています。

国内の研究でもわかった「洗濯前の衣類」の細菌汚染

同様の傾向は日本国内の研究でも確認されています。北里大学の林俊治教授らが実施した厚生労働科学研究費補助金による研究(2020年度)では、洗濯前の衣類を調べたところ、調査したすべての衣類から細菌が検出されました。検出された菌の多くはブドウ球菌属・コリネバクテリウム属・バシラス属で、皮膚に直接触れる衣類ほど検出される細菌量が多く、特に靴下からは大量の細菌が検出されたと報告されています。

同研究では、黄色ブドウ球菌は皮膚や血液の感染症のほか食中毒の原因にもなり、免疫が低下している人には日和見感染を起こす可能性があると指摘されています。一方、洗濯後の衣類からは芽胞形成菌であるバシラス属以外はほとんど検出されず、通常の洗濯工程で多くの細菌が除去されることも示されました(厚生労働科学研究成果データベース, 2022年公開)。

古着を安全に着るための洗濯方法

フリーストーン氏は、新しく購入した古着を着用前に必ず洗濯するようすすめています。具体的には次のような方法が有効です。

  • 60度前後のお湯と洗剤で洗う(冷水は病原体の除去に不向き)
  • 高温での洗濯ができない素材は、洗濯用の消毒剤を併用する
  • 最初の1回は通常の洗濯物と分けて洗う
  • 抗菌洗濯洗剤を溶かした熱めのお湯に2〜3時間つけ置きする
  • 熱風の乾燥機やスチームアイロンで仕上げる

フリーストーン氏は、多くの古着販売業者が販売前に洗濯していると説明していても、それが徹底されているとは限らないとも指摘しています。古着に限らず、新品の衣類も着用前に一度洗濯しておくと安心です。

まとめ

古着は環境にもお財布にもやさしい選択肢ですが、着用歴のある衣類には細菌やウイルスが残っている可能性があります。国内外の研究データが示す通り、洗濯前の衣類は皮膚常在菌を中心に一定の細菌汚染があるのが実情です。購入後は高温洗濯や消毒剤の使用など、ひと手間かけてから着用することで、感染リスクを大きく減らすことができます。

よくある質問(FAQ)

Q1. 古着はどのくらいの温度で洗えば安全ですか?
A. 60度前後のお湯と洗剤での洗濯が推奨されています。冷水では病原体を十分に除去できないとされています。

Q2. 古着屋で販売されている服はすでに洗濯済みですか?
A. 店舗によって対応は異なり、必ずしも販売前にクリーニングされているとは限りません。購入後は自宅で一度洗濯することが推奨されます。

Q3. 高温で洗えない素材の古着はどうすればいいですか?
A. 洗濯用の消毒剤(漂白剤や除菌洗剤)を併用することで、細菌を減らす効果が期待できます。

Q4. 免疫が低下している人は特に注意が必要ですか?
A. はい。健康な人には無害な菌でも、免疫が低下している人には感染症を引き起こすリスクが高まるとされています。

Q5. 新品の服も洗濯してから着た方がいいですか?
A. はい。専門家は新品・古着を問わず、着用前の洗濯を推奨しています。

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