asology [アソロジー]

【笑いあり涙あり】異色のコンビが生み出すハートフル・コメディ『キンキーブーツ』

2006年に公開された映画『キンキーブーツ』。
実話を元に描かれた作品で、2013年にブロードウェイでミュージカル化され、日本でも2016年・2019年に小池徹平さんと三浦春馬さんのW主演で上演されています。また、昨年秋には三浦春馬さんから城田優さんへとキャスト変更し、3度目の再上演が行われたほど人気のある作品です。

実はこの作品を知ったのも、音楽番組でミュージカル『キンキーブーツ』の曲が披露されているのを見たのがきっかけなんです。(三浦春馬さんがめちゃくちゃ綺麗でした・・・!)

そんな『キンキーブーツ』は、優柔不断な男チャーリーとドラァグ・クイーンのローラが倒産寸前の靴工場を立て直すために奮闘する、笑いあり涙ありのハートフル・コメディです。

ピンチに舞い降りた女神はドラァグ・クイーン

舞台となったのは、イギリスの小さな田舎町ノーサンプトンにある靴工場。そこでは格式高く伝統的な紳士靴を作っていました。

その工場の3代目となる息子チャーリーは、父親の「工場を継いでほしい」という想いとは反対に、婚約者ニコラの転勤を機に都会ロンドンへと引越しマーケティングの仕事を始めようとしていました。
しかし、ロンドンに着くなり父親が逝去したとの連絡が入ります。

思わぬ形で相続することになったものの蓋を開けてみると、工場経営はうまくいっておらず倒産寸前。唯一の取引先も無くなり、在庫処分のため訪れたロンドンでひとりヤケ酒を浴びるチャーリー。店を出て夜のロンドンの街を歩いていると、女性が複数の男たちに囲まれているのを目撃します。
履いていたブーツを武器に男たちに反撃しようする女性。チャーリーは助けに入ろうとしましたが女性が振り回したブーツが直撃し、その場で倒れてしまいます。

目を覚ますと、そこには体格の良い女装姿の男性が。チャーリーが助けようとしたのはローラと名乗るドラァグ・クイーンでした。
ヒールが潰れてしまったブーツを見てローラは「人生の重みに耐えられないのよ」とつぶやきます。
ローラが履いていたブーツは女性用なので、男性の体重を支えきれるわけもなくサイズも小さくて窮屈そう。
このブーツにチャーリーは興味が湧きます。

ノーサンプトンに戻ると、チャーリーは父親の代から働いてくれている従業員の半数を解雇します。経営難のため仕方がないとしても「クビにするなんてひどい!」と泣きながら工場をあとにする従業員に胸が痛みます。なんでこんな思いをしなくちゃいけないんだと頭を抱え、ついには解雇を告げたローレンに「どうしたらいい?」なんて聞いちゃう始末。
ローレンは「どうしようなんて嘆いてないで新たにニッチ市場を開拓するべきよ!」と怒って捨て台詞を吐き、その場をあとにします。
そこでチャーリーの頭に浮かんだのはローラが履いていたあのブーツ。

ドラァグ・クイーン専用のブーツにニッチ市場を見出したチャーリーは、「ブーツを作ってミラノの見本市に出展するぞ!」とローレンを再雇用しデザイナーとしてローラを迎え入れ、ドラァグ・クイーン専用のセクシーなブーツ「キンキーブーツ」の制作をスタートさせました。

異色のコンビが生み出す差別と偏見を超えた友情

倒産寸前の紳士靴工場がドラァグ・クイーン専用のブーツを作って経営を立て直していくというあらすじに面白くないわけない!と観る前からワクワクが止まりませんでした。
優柔不断な男チャーリーと物怖じせず自分を貫くローラ。序盤は異色のコンビに、工場の立て直しなんてうまくいくのかな?なんて思って観ていたのですが、父親の期待に反して生きてきたことや、周りから少し浮いてしまっていたこと、表面からは見えない共通点が2人を結びつけます。
交わることのなかった2人が周囲の人を巻き込み引き付けていく様は不思議だけど温かく、心に染みるものがありました

セクシーでパワフルなショーパフォーマンス

この作品のもうひとつの魅力はなんといってもローラがパフォーマンスをするシーン!

きらびやかで色鮮やかなドレスで着飾ったローラとその仲間たちがショーでパフォーマンスするシーンが劇中に何回か映るのですが、パワフルに歌い踊るローラたちがすっっっごくセクシーで美しいんです!!そのシーンの度に目が釘付けになってました。ブロードウェイでミュージカル化されているのも納得です。

最後に

今よりもジェンダーに対して理解が進んでいなかった時代に、ドラァグ・クイーンという存在はまるで別世界の人間のように見られることが多かったと思います。
しかし、そういった差別や偏見というテーマを扱かいながらも、コメディ要素が強く描かれていたので不快感や抵抗感を感じることなく観ることができました。

女性の心を持ちながら芯があり男らしい性格のローラ、男性の心を持ちながら優柔不断で男らしくない性格のチャーリー。現代でも“女らしさ”とか“男らしさ”が話題に上がりますが、そんなことは本当はどうでもよくて、その人らしくいられれば良いんだと気づかせてくれます。
「紳士と淑女、そしてまだどちらか迷っているあなた!」というローラがショーの始まりで放つセリフがあるのですが、このセリフはまさに視聴者側に向けているメッセージでもあると思います。
ありのままの自分を愛したい!本当の自分を隠さず自由に生きたい!そんな気持ちが溢れ出る作品です。

モバイルバージョンを終了