今回ご紹介するのは、「ヘレディタリー/継承」で大きな注目を集めた、アリ・アスター監督の長編作品2作目となる「ミッドサマー」。これまでのホラー映画とは一味も二味も違う作品です。
予告動画がこちら。
ホラー映画といえば、夜だったり森の中だったり暗くてジメ~っとした空間の中で怖いことが起こっていくのが普通というか“ホラー映画の常識”みたいなところがありますが、予告動画の通り「ミッドサマー」は全編通して日中の明るい中で物語が進行していきます。
「明るいのに恐ろしい。」
この恐怖の歴史を覆す世界観に公開当時注目を集めました。
そんな映画「ミッドサマー」の魅力をご紹介していきます。
あらすじ
女子大生のダニーは、うつ病を患う妹が両親を道連れに心中を図り、心に深い傷を負います。
家族を失い悲しみに暮れるダニーは、大学で民俗学を研究する恋人クリスチャンから、論文のためにスウェーデンの夏至祭を見に行くから一緒に来ないかと誘われ白夜の村ホルガを訪れます。
太陽が沈むことがないその村は、美しい花々が咲き誇り、優しい住人たちが陽気に歌い踊る、楽園のような場所でした。しかし、そんな幸せな雰囲気に満ちた村に不穏な空気が漂い始め、妄想やトラウマ、不安、そして恐怖により、ダニーの心は次第にかき乱されていきます。
美しさとグロテスクのコントラスト
白夜の明るい青空の下、美しい自然と優しくもてなしてくれる住人たちに感動するダニーたちでしたが、その感動はのちに地獄と化します。
ホルガ村では「90年に一度の祝祭」ということで9日間に渡る宴が行われるのですが、そこで目の当たりにしたのは目を疑うほどの恐ろしい儀式だったのです。
祝祭2日目にしてさっそく、崖から老人が飛び降りて自殺するという光景を見せつけられます。
衝撃受けるダニーたちにすぐさま上品なご婦人が駆け寄って、「これが村の伝統文化なんです」と説明をしてくれますが、あまりの異常さに当然戸惑いを隠せません。
しかし、村の人たちは理性的で野蛮なムードではないし自分たちに危害が加わることはないだろうと、謎の安心感からそのまま滞在を続けます。
美しい自然の中を美しい民族衣装を来た村人たちが楽しそうに暮らす平和的空間とこのグロ過ぎる儀式の強すぎるコントラストに頭がおかしくなりそうでした・・・。
ちなみに、飛び降りたもののまだ息があることを知った村人たちが、老人の頭をハンマーでぐしゃっと潰してしまう激ヤバシーンが映るので、グロ耐性が無い方は覚悟して観る必要があります。
そして一番の見どころ(?)かもしれないのが「性の儀式」シーン。
裸にさせられたクリスチャンが村人の女の子とマジの子作りをするシーンなんですが、その儀式中周りには村の女性たちが裸になってクリスチャンたちを囲み見守ります。しかもヒートアップしてくると一緒に喘ぎだすというもう意味が分からなすぎる状況になります。
当時映画館で観た私と友達はこのカオスなシーンに心の中で大爆笑していました。男女で観に行くと間違いなく気まずくなるのでご注意ください。
別れた方がいいカップルにおすすめ
「ミッドサマー」は、「カップルで観ると別れてしまう映画」と言われています。
というのも、主人公のダニーは精神的に不安定で恋人のクリスチャンに依存しがち。(いわゆるメンヘラ)
恋人関係もマンネリ化しており、クリスチャンはそろそろ別れようかな…なんて思っていた矢先、ダニーが家族を失い別れ話どころじゃ無くなってしまうんですよね。
スウェーデン旅行も本当は友達とだけで行く予定だったのに、ダニーから「どうして私にだけ黙ってたの」と詰められ、その場しのぎで「一緒に行く?」と誘ってしまいます。
ダニーのメンヘラで面倒くさいところと、クリスチャンの愛情は無いけど傷つけてしまうのが恐いからただ一緒にいるという迷惑な優しさ。実際にこういうカップルいるよなぁと思うほどこの2人の関係がなんともリアルで、「カップルで観ると別れる」と言われているのはこういうところにあるのだと感じました。
ちなみに「ミッドサマー」製作の経緯は、「ヘレディタリー/継承」の脚本を読んだスウェーデンのプロデューサーから「アメリカ人が夏至祭の間にスウェーデンのコミューンを訪れる物語」を提案されたことが背景にあるとのこと。
しかし、そのアイデアだけでは響かなかったアリ・アスター監督は、当時付き合っていた恋人と別れてしまったことをきっかけに、「これを失恋ムービーにして恋愛関係の終焉や人間関係の別離の物語にしたら面白くなるんじゃないか?」と思い製作に至ったそうです。
つまり、監督自身はホラー映画として作ったわけではないということなんです。
「カップルで観ると別れる映画」と言われていることに対して「固い絆で結ばれているカップルが観れば、なんの問題もないと思います。ただこの映画は、自分が恋人と別れたときに体験した葛藤から生まれた作品でもあります。もし自分たち2人は一緒にいるべきではないのかも?と考えるカップルがいるなら、『この映画を観て別れた』というレガシーを残してほしい」というコメントを残しています。
最後に
明るい中で繰り広げられる気味が悪くてグロテスクな光景に不快になること間違いなしですが、スウェーデンの集落の風景や独特な建築、映像はアーティスティックで、恐怖を味わいながらも引き込まれます。
ホラーやグロが苦手な方にはあまりおすすめ出来ませんが、一度観たら忘れられないほどの映像体験を味わうことができるので、興味のある方はぜひ観てみてください!