今回ご紹介するのは、「シャイニング」や「IT」など数々のホラー作品を生み出してきたスティーブン・キング原作の映画「ペット・セメタリー」。
原作は1983年に発表されていますが、実はそれよりもずっと前に原稿は完成していたそうなんです。というのも、執筆当時、あまりの恐ろしさに出版が見送りになったんだとか・・・。
このような背景もあり、「ペット・セメタリー」は”スティーブン・キング”最大の問題作と言われています。
出版を見送るくらい恐いなんてそんなの観るっきゃない!と、好奇心満々で観てみたわけですが、今回私が観たのは1989年に公開された映画のリメイク版なんですね。原作に忠実に作られた前作とはストーリーが少し違うので、公開当時は「前作のほうが良かった…」という声も多かったそうです。
ということで、私は前作を観ずにまっさらな状態でリメイク版を観てみました!
あらすじ
家族と田舎に引っ越した医師のルイス。新居の裏には謎めいた動物の墓地”ペット・セメタリー”がありました。ある日飼い猫が事故にあって死んでしまいます。墓地を超えた奥深くの森に埋葬すると、なんと次の日、凶暴に豹変した猫が姿を現しました。ルイスが埋葬した森は、先住民が語り継ぐ”秘密の森”だったのです。
そして迎えた娘エリーの誕生日、エリーは交通事故に遭い帰らぬ人に…。
果たしてルイスの取った行動とは___。
洋画ホラーには珍しい”ジメジメ系”ホラー
観ていて珍しいなと思ったのが、日本のホラー映画によくある”ジメジメ”したテイストだったこと。
洋画ホラーといえば派手な演出や脅かし方をする作品が多いんですが、「ペット・セメタリー」は多少派手に驚かせてくるシーンやグロいシーンがありながらも、他のホラー映画に比べて雰囲気が暗くてジャパニーズホラーっぽかったです。そのテイストが余計怖さを倍増させています。
それに加えて、BGMとして後ろでずーっと鳴ってる音も不気味で、わざとらしくないのにしっかり怖がらせてくる感じが上手いなぁと思いました!
最悪の方向にしか進まない物語
あらすじにも書いた通り、墓地の奥深くにある”秘密の森”は死者を蘇らせます。
そのことを知っていた隣家に住むジャドは、飼い猫のチャーチが事故で死んでしまったとき、チャーチを一番可愛がっていたエリーにこの事実を告げるのは酷だということでその森へ埋葬するようルイスに伝えます。言われるがままチャーチの死骸を埋めると、なんと翌日チャーチが生き返って帰ってくるのです。しかし、帰ってきたチャーチはあれほど可愛がってもらっていたエリーにも牙を剥けるほど凶暴化しており、手に負えないと思ったルイスは家から離れた場所にチャーチを捨てることに。エリーにはどこか遠くへ逃げてしまったと嘘をつきます。
そして、凶暴化した飼い猫や森のことで混乱しながらも迎えたエリーの誕生日。遠くへ捨てたはずのチャーチが歩いて戻ってきます。それを見つけたエリーはチャーチが戻ってきた!と嬉しそうに駆け寄りますが、トラックに跳ねられそのまま帰らぬ人に・・・。愛する我が子の死をルイスは受け入れることができず、チャーチを埋めた”秘密の森”にエリーを埋めて蘇らせてしまいます。しかしチャーチのように凶暴化していました。
ここからの展開はもうお察しの通りだと思います。子どもを持つ親にとって我が子が亡くなってしまうのは一番辛いことだと思いますが、愛するが故にとったこの行動が最悪の方向へと進んでいく様は、もう元通りにはならないんだという絶望さも相まって胸が苦しくなりました。
子役の不気味な演技が上手すぎる!
演出や展開以外にも、ルイスの娘エリー役の子役の演技にもご注目!
蘇るまでのエリーは無邪気で可愛らしい雰囲気だったのに対して、蘇って戻ってきたエリーはまるで別人のよう。目が虚ろで何を考えているか読めない不気味な雰囲気を漂わせていました。
エリーとエリーじゃない”何か”をしっかり演じ分けられていました。
最後に
娘を亡くした父親が巻き起こす”禁忌ホラー”「ペット・セメタリー」は、”愛するが故に、呪いの力を借りてまでも死んだ家族を生き返らせようとしてしまう”という「人間愛・家族愛の哀しさ、人間の愚かさ」をホラー色強めに描かれています。
途中、「どういう意味なんだろう?」と謎めいたシーンが出てきますが、これまでのホラー映画とはテイストも違いますし、緩急のあるストーリーやメリハリのある映像で飽きることなく観ることができました。
エリーを蘇らせてからの物語の後半は、最悪が最悪を生み最終的には胸クソな結末を迎えます。
子どもが危険にさらされるタイプの映画が苦手な方にはおすすめできませんが、胸クソ展開が好きな方には刺さる作品だと思います。
昨年、ルイス一家の隣家に住むジャドの若い頃を描いた「ペット・セメタリー」の前日譚「ペット・セメタリー:ブラッドライン」が公開されているので、そのレビューも近々行おうと思います。