【映画レビュー】人種差別を乗り越える2人の友情を描いたロードムービー「グリーンブック」観てみた

今回ご紹介するのは、映画「グリーンブック」。

アカデミー賞3部門を受賞した名作とあって、映画はそんなに詳しくないという方もご存知の作品ではないでしょうか。

あらすじ

時は1962年、ニューヨークの一流ナイトクラブで用心棒として働くイタリア系アメリカ人のトニーは、ガサツで無学ですが、腕っぷしとハッタリで家族や周囲に頼りにされていました。
ある日、トニーは黒人ピアニストの運転手兼ボディガードとしてスカウトされます。彼の名前はドクター・シャーリー。カーネギーホールを住処とし、ホワイトハウスでも演奏したほどの天才は、なぜか差別の色濃い南部での演奏ツアーを目論んでいました。2人は<黒人用旅行ガイド=グリーンブック>を頼りに出発しますが・・・。

↓予告動画です↓

映画好きの間でも高く評価されており、私も気になっていたので観てみたところ期待をはるかに上回る作品でした。そんな映画「グリーンブック」の魅力や感想を綴っていきたいと思います!

2人が生きた1960年代

映画のタイトルになっているグリーンブックはあらすじにも書いたとおり、黒人用の旅行ガイドブック。もう少し詳しく説明すると、1936年から1966年までヴィクター・H・グリーンにより毎年出版された黒人が利用可能な施設を記した旅行ガイドブックです。ジム・クロウ法の適用が郡や州によって異なる南部で特に重宝されたといいます。

※ジム・クロウ法とは、1870年代から1964年までアメリカ合衆国の南部諸州で施行されていた黒人差別を目的とした州法です。この法律によって、学校やバスなどの交通機関、公園、水道、トイレなどの公共施設が白人用と黒人用に分離されました。

“黒人用”のガイドブックなんてものができてしまうくらい2人の生きた1960年代は差別の濃い時代だったんですね。

実際どのくらい酷かったのかは作中で度々描かれるシャーリーに対しての対応から伝わってきます。
例えば、コンサートの主賓であっても一般のトイレすら使わせてもらえず、機能しているのか分からないほどみすぼらしい外のトイレを使えと案内されたり、「しきたりですので」の一点張りでレストランに入れてもらえなかったり。
どれだけコンサートで素晴らしい演奏をしても、「ピアニスト」の前に「黒人」として見られているという事実が凄く苦しかったです。

日本で生活していて人種差別を感じることがほとんど無いのは、子供の頃から教わる「人権学習」の賜物なんだなと思いました。

相互理解の重要性

トニーも最初は黒人が口を付けたコップを捨てるほど黒人を差別の対象として見ていました。なのでシャーリーの運転手兼ボディガードにスカウトされた時もあまりいい顔をしていませんでした。
そしてシャーリーもまた、教養のないトニーをどこか見下したような偉そうな態度を取ります。序盤のトニーとの初対面シーンでは教養や実績、社会的地位の高さをアピールするためか、玉座に座って話をしていました。
そんな、お互いを見下し合う2人ですが、旅をしていくうちにお互いのことを深く知るようになり、知ってみると「思ったよりいいやつかも…」という認識に変わっていきます。
シャーリーはトニーに品位と教養を教えて、トニーはシャーリーに気持ちを素直に伝えることの大切さを教えます。そうやってお互いの短所を長所で補い合う関係性を構築していくと、いつの間にか2人の間に偏見は無くなっていました。
この“相互理解”をすることが差別に立ち向かう方法になるのかなと2人を見て学びました。

手紙のシーン

作中印象的だったのが、トニーが妻のドロレス宛てに手紙を書くシーン。教養のないトニーは誤字が酷く、内容もまるで子どもが書くような稚拙な文章でした。
シャーリーはそんなトニーを見て「手紙はこう書くものだ」とアドバイスします。おかげでドロレスからも喜ばれ、シャーリーの教養の深さ知り、この手紙を書くという行為は2人の距離を一気に縮めたように思います。この共同作業があったからこそお互いの気持ちが近づいたのかもしれません。

シリアスの中に紛れるコメディ要素

人種差別がテーマということでシリアスなシーンが多いのかなと思いきや、クスッとしてしまうコメディ要素も描かれているのが本作の魅力の一つだと思います。
例えば、物語の序盤に描かれるパーキングエリアでのシーン。パーキングエリアに立ち寄った際、トニーは地面に落ちてしまった売り物の石を盗んでしまいます。盗んだことがバレてシャーリーからお説教を受けるトニー。結局半ギレしながら石をお店のカウンターに戻しにいくのですが、この2人の図がお母さんと子どもみたいでなんだか微笑ましかったです。

もう一つ好きなシーンがあって、それが道中ケンタッキーフライドチキンを食べるシーン。
トニーは素手で手づかみしてフライドチキンを食べますが、今までフライドチキンを口にしたことが無いというシャーリーは、「素手で?!」という反応をしながらゆっっくりと食します。ここのシャーリーが、まるで不良から悪いことを教わるお姫様みたいで笑ってしまいます。
そのあと食べ終わったあとのチキンの骨を2人でわいわいしながら車から捨てますが、トニーがゴミも一緒に捨てたのを見ると「拾いなさい!」としっかり拾いに行かせるというシーンもなかなかおもしろかったです。

最後に

差別を乗り越える2人の友情を描いた「グリーンブック」。「感動!号泣!」というより心が温まるようなそんな作品です。ぜひ観てみてください!

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