【ブックレビュー】『こう見えて元タカラジェンヌです』天真みちる

昨年3月に発売されるやすぐに重版が決まり、Amazonランキングの「宝塚カテゴリ」でも第1位を獲得し大きな話題となった「こう見えて元タカラジェンヌです」。元宝塚ファンの私も、泣きながら(感動の涙ではなく爆笑の)一気に読んだ1冊をご紹介します。

こう見えて元タカラジェンヌです

株式会社左右社

異色の宝塚関連本

 

「宝塚歌劇団(以下・宝塚)」といえば、麗しの男役トップスターや可憐な娘役スターが、現役時代はもちろん退団後も芸能人として活躍しているイメージが世間一般のものだと思います。宝塚に関する本も、現役時代に発売されるスターさんの写真集や、退団後の伝記的要素がメインものが多いです。
実は私、あの天海祐希さんが宝塚現役の頃熱狂的なファンで、写真集やエッセイ集、退団記念の書籍を全て持っていました。また、宝塚歌劇団では「歌劇」や「宝塚GRAPH(グラフ)」などの月刊誌も毎月発行されていて、世の中にはかなりの数の宝塚関連本が存在します。

この『こう見えて元タカラジェンヌです』は、100年以上の歴史を誇る宝塚でも異色の宝塚関連本で、トップスターの本ではないのに(天真さんのファンの方ごめんなさい)、発売即1万部突破!天海祐希さん退団後は熱が冷め、宝塚から遠ざかっていた私ですが、この本を読んで「この人がタカラジェンヌの時に舞台観たかったな・・・」と、こんなに面白いタカラジェンヌ(天真さんのファンの方ごめんなさい)をなんで当時知らなかったのか!と激しく後悔しました。

著者・天真みちるさんは宝塚の名バイプレイヤーだった!

強烈な表紙からもお分かりのように、著書の天真みちる(てんま みちる)さんは現役時代、いわゆるトップスターではなく、脇を固めたタカラジェンヌ。宝塚は各組(花・月・雪・星・宙そら)に1人の男役のトップスターが存在し、私が愛した天海祐希さんは1993年から1995年まで月組の男役トップスターでした。
宝塚歌劇団のシステムをご存じの方には当たり前のことですが、タカラジェンヌになるためには「東の東大、西の宝塚」と言われるほどの倍率(ちなみに、一番高かったのは1994年入学の第82期生の48.2倍。最近では、20倍台に落ち着いていますが、昨年は17.4倍となり、少子化やコロナ禍の影響があるようです)を勝ち抜いた15歳から18歳までの乙女たちが2年間「宝塚音楽学校」で舞台人としての基礎をみっちり学び、卒業後入団し初舞台を踏み、入団後も独自のピラミッド型の宝塚トップスターシステムを制した一握りのスターさん達が、ああやって主役として宝塚を率いているわけです。みんな、舞台のより中央に立ちたいと努力を重ねていて、だれも最初から脇役志望の人なんでいないんですよね。

天真さんももちろん、初舞台の後は花組に配属され、いつかはトップスターを夢見てタカラジェンヌとしてのキャリアがスタートさせますが、入団2年目にして天真さんのその後を左右する「おじさん」役と出会います。
本編の第2幕・第17場「新人公演の試練!~おじさん役者への道~」で描かれているのは、入団7年目までのフレッシュなタカラジェンヌ達が1日限りの公演を行う「新人公演」でのこと。当時、天真さんが貰った役は、フランスのマルセイユという観光地で娘役トップスターに話しかける観光客の男性役。セリフは「夜の街を案内してくれないか?」。どう演じようか悩みに悩み、フランスの観光ガイド本を買いイメージトレーニングまでした天真さんは、本公演で演じている先輩の演技を穴が開くほど観察した結果、「楽しそうに踊るおじさん」という一筋の光を見つけます。舞台を見た人から【「あのおじさん、楽しそうで旅行が大好きなんだね」という感想が出る】というビジョンが見え、「与えられた役を追求する」ことの楽しさに目覚めたそうです。

結果として、天真さんはその後「角刈りの車引き」や「モヒカンの用心棒」や「常に半目の右大臣」など、癖の強いおじさん役を極めたバイプレーヤーの道を進むことになるのです。

清く正しくおもしろく!?

宝塚歌劇団を象徴するフレーズといえば「清く正しく美しく」。これは、宝塚歌劇の創始者である小林一三氏の言葉で、宝塚音楽学校の校訓であり、宝塚歌劇のモットーです。天真さんも15年という宝塚人生の中で、きっと体内のDNDレベルにまでこのモットーがしみ込んでいると思われ、また本当に宝塚を愛してやまない根っからの「ヅカファン」(宝塚歌劇のファンのこと)ゆえに、この本は全体を通して上品で、日本語も美しく、とても読み進めやすいです。

最近では「ディスする」ことで面白くしたりする芸風が主流ですが、私はどうもあれが苦手です。でもそこは「清く正しく美しい」宝塚の元タカラジェンヌが紡ぎだした文章なので、常に尊敬の念を忘れず、決して宝塚をディスることなく、初心者の方にも分かりやすいように構成されています。

ただ、自分の事になると話が違ってきます。「何もそこまで言わんでも・・・」ぐらいに、自分の失敗談や壁にぶち当たってきたエピソードなどは面白おかしく紹介されています。

例えば、音楽学校時代は声楽・ダンス・演劇・日本舞踊などの授業が朝から晩まであり、体を酷使するハードさから常に満身創痍状態で、眠気との戦いだったそうです。天真さんはその眠気と戦うため、何とタイガーバームを眉間にぬりたくるという暴挙に出ました。本編の第1幕・第5場「春の陽気と眠気とタイガーバーム」ではそのエピソードが紹介され、初めてタイガーバームを眉間に塗った時の様子を「『天空の城ラピュタ』のムスカの痛みが100%理解できた」と表現しています。

まさに、「清く正しくおもしろく」な一冊です。

待望の続編が!

昨年10月に『こう見えて元タカラジェンヌです』の続編連載が決定!天真さん自身の退団記念日である10月14日から、「cakes」(https://cakes.mu/series/4395)にて隔週木曜日に更新されています。

宝塚歌劇団を卒業してからサラリーマンとして一般企業に勤め、宝塚の世界と一般社会のギャップを感じながら「第二の人生」を突き進む様子を描く、抱腹絶倒の自伝的エッセイとなっています。

これからもますます目が離せない天真みちるさん。まだご存知で無い方は、ぜひ入門編としてこの『こう見えて元タカラジェンヌです』を読んでみてはいかがでしょうか?

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