2024年の年末のasologyでご紹介した、NetflixとPrime Videoで独占同時配信された話題作『ザ・コメデュアル』。配信開始直後から、お笑いファンを中心にSNSでも大きな話題となりました。
※過去記事→【Netflix】大晦日はこれを観よ!『ザ・コメデュアル』で笑い納め
筆者自身、年末年始の休みを利用して全編視聴しましたが、率直に言って「ここ数年で最も贅沢なお笑いコンテンツの一つ」だと感じています。
地上波ではなかなか見られなくなった“長尺の漫才”“攻めたアドリブ”“芸人同士だからこそ成立する空気感”が、この番組には詰まっています。
今回は、実際に全コンテンツを視聴したうえで、特に印象に残った漫才ベスト3を、お笑い好き視点でレビューしていきます。
※本記事はネタバレを含みます。
『ザ・コメデュアル』とは?
『ザ・コメデュアル』は、芸人同士が互いに「見たいネタ」をリクエストし、そのネタを披露するという形式のバラエティ番組です。
出演者は、霜降り明星、令和ロマン、千鳥、笑い飯、チュートリアル、さや香など、漫才賞レースでも実績を残してきた人気芸人たち。
単なる“ネタ番組”ではなく、
・なぜそのネタを選んだのか
・当時の裏話
・M-1との関係
・漫才観や芸人論
まで語られる点が非常に興味深く、漫才好きにとってはかなり満足度の高い構成になっています。
特に印象的だったのは、「配信だからこそできる自由度」。
地上波では尺やスポンサーの都合で難しいような長い“間”や、ギリギリの自虐ネタ、アドリブもそのまま生かされており、「芸人が本当にやりたい笑い」を見ている感覚がありました。
また、ネタだけでなく披露後のトークパートも見応えがあります。「なぜそのネタが名作なのか」を本人たちが解説してくれるため、お笑いに詳しくない人でも楽しみやすい構成です。
個人的ベスト3
第3位 千鳥「おぬし」

©吉本興業
千鳥の漫才『おぬし』は、笑い飯との回で披露された一本。
設定自体はシンプルで、「奥さんから妊娠報告を受ける夫」という王道シチュエーションなのですが、そこに“大悟ワールド”が全力で注ぎ込まれています。
「あなた」をなぜか「おぬし」と言い換え続ける大悟さん。
しかも、その一言をとにかく繰り返す。
普通なら「しつこい」で終わりそうな流れを、ノブさんのリアクションと絶妙な“間”で笑いへ変えていくのが、さすが千鳥だと感じました。
特に印象的だったのは、配信コンテンツならではのテンポ感です。
地上波だと編集で短くされそうな空白や間延び寸前の時間が、逆にジワジワと笑いを増幅させていました。
また、対する笑い飯のネタも非常に完成度が高く、“Wボケ漫才”の面白さを改めて感じられる内容でした。
第2位 チュートリアル「冷蔵庫」

©吉本興業
個人的に最も「配信時代のお笑い」を感じたのが、この『冷蔵庫』でした。
このネタは、2006年のM-1グランプリ決勝でも披露されたチュートリアルの代表作の一つ。今回、約18年ぶりに披露されたことで、お笑いファンの間でも大きな話題になりました。
まず衝撃だったのが冒頭。徳井義実さんが放った“納税ネタ”です。
かなり攻めた自虐ボケでしたが、地上波では難しそうなラインを、配信ならではの空気感で成立させていました。
そして本編。
「冷蔵庫を買おうかな」という福田さんの一言から始まるのですが、そこから徳井さんが“冷蔵庫”をまるで恋愛対象のように扱い始めます。
このネタの凄さは、
・話が全然噛み合っていない
・でも会話として成立している
・しかもずっと面白い
という点。
チュートリアル特有の“異常な世界観”が全開でした。また、18年ぶりとは思えない完成度にも驚かされました。長年第一線で活躍してきた実力を改めて感じた一本です。
第1位 霜降り明星「アンパンマン」

©吉本興業
今回、最も爆発力を感じたのが霜降り明星の『アンパンマン』でした。
令和ロマンから「アドリブで展開するネタ」としてリクエストされた一本で、配信トップバッターとして披露されています。
特に凄かったのは、せいやさんの瞬発力。ジャムおじさんのモノマネをベースにしながら、客席のお題にも即興で対応し、“パン縛り”でボケ続ける展開は圧巻でした。
さらに、過去のスキャンダルや週刊誌ネタまで笑いへ変えていくスタイルは、まさに配信コンテンツならでは。かなりギリギリのラインを攻めていますが、それを笑いとして成立させる技術力の高さを感じます。
また、このネタを通して感じたのは、霜降り明星の「ライブ感」の強さ。
完成された漫才というより、“今この瞬間にしか生まれない笑い”を全力で作っている感覚があり、見ている側も引き込まれました。
『ザ・コメデュアル』は“漫才好き”ほど刺さる作品だった
結果的に、今回の個人的ベスト3はすべて漫才になりました。もちろんコントも面白く、中でも中川家のコントは“名人芸”という言葉がしっくりくる完成度でした。
ただ、この番組最大の魅力は、「芸人が本当に面白いと思っているネタ」を、制約の少ない環境で全力披露している点だと思います。
近年はショート動画文化の影響もあり、短時間で分かりやすい笑いが主流になりつつあります。
その中で、『ザ・コメデュアル』は、長尺だからこそ成立する“間”や“空気”の面白さを改めて感じさせてくれる作品でした。
お笑い好きはもちろん、「最近ちゃんと漫才を見ていない」という人にもおすすめしたい配信コンテンツです。