“モキュメンタリーホラー(ドキュメンタリー風に制作されたホラー作品)”動画を公開しているYouTubeチャンネル「フェイクドキュメンタリーQ」。ホラー好きな筆者が、このチャンネルのおすすめ回をご紹介していきます。
今回ご紹介するのは、シーズン2の9回目としてアップされた「幽霊と話せる電話番号」。
正直に言って、視聴後しばらく余韻が抜けませんでした。
30分という比較的長尺にもかかわらず、体感はあっという間。噂話レベルの都市伝説が、いつの間にか取り返しのつかない“場所”へ連れて行かれる――そんな感覚を味わえる一本です。
本編はこちら。
平成ホラーを思い出させる、懐かしくも危険な導入
冒頭に映し出されるのは、掲示板とともに表示されるテロップ。
あなたはこの噂を知っていますか
そして並ぶのは、
かけてはいけない電話番号
・ドッペルゲンガーの電話番号
・リカちゃん電話
・幽霊と話せる電話番号
どれも一度は聞いたことがありそうな、どこか懐かしい都市伝説です。
平成時代に流行した「〇〇につながる電話番号」を思い出し、少しだけ安心してしまう。
しかし、この“安心感”こそが、本作の巧妙な罠だと後から気づかされます。
前回レビューした「隠しリンク」にも通じる、じわじわと現実に侵食してくるような雰囲気。
「今回はどんな手口で来るんだろう」と、自然と期待が高まります。
登場人物のリアリティが、物語を一段引き上げる
インタビューに登場するのは、自主映画を制作しているという映画監督・村上さん。
淡々と語る口調と、少し生活感のある佇まいが妙にリアルです。
調べてみると、この村上さんは実在の映画監督で、「呪霊 THE MOVIE」や「怪談新耳袋」シリーズなど、ホラー作品を手がけてきた人物。この実在性が、フェイクと現実の境界を一気に曖昧にしてきます。
インタビュー中に登場する「オリジナルホラーDVD」も、かつてレンタルビデオ店に並んでいそうな短編ホラー集の雰囲気で、作り込みが非常に細かい。
単に“怖いことをする”のではなく、こっくりさんを使って番号を探る、という手法も含めて「これは触れてはいけないものだ」という感覚を、自然に刷り込んでくる構成が見事です。
ここからが本番――電話番号が“公開された”という事実
本作の核心は、「幽霊と話せる電話番号」として、実際に監督自身の番号を公開していたというエピソードにあります。
会話が成立したことはない。
しかし、留守番電話には奇妙なメッセージが残されていた――。
文字情報と音声だけで展開されるこのパートは、映像が少ないにもかかわらず、異様な不穏さを放っています。フェイクドキュメンタリーQらしさが、一気に加速する瞬間です。
山、廃屋、子どもの絵――原始的な恐怖の連打
後半に登場する「心霊ドキュメンタリーVHS」の映像は、本作でも特に印象的でした。
山中に脱ぎ捨てられた衣服。人が“確かに存在していた”痕跡と、理由の分からない行動が、恐怖を増幅させます。
シリーズを通して何度も登場する「山」というロケーション。文明から切り離された場所が持つ、根源的な不安を強く感じさせます。
さらに、山中に現れる廃屋、子どもが描いたような絵、不気味なメッセージ。
これらが重なり合い、「ここに長居してはいけない」という直感を視聴者に植え付けます。
そんな状況で、例の電話番号に電話をかける男性。その行動力(というか無謀さ)にも、思わず息を呑みました。
最悪の理解と、最悪の結末
物語が進むにつれ、謎のメッセージの意味が明らかになります。
「そういうことだったのか」と腑に落ちた瞬間に聞かされる、新たな録音音声。
……正直、かなりキツいです。
音だけで、ここまで想像させるのかと唸らされました。
そして再び、村上監督のインタビューへ。
あの電話番号に電話をかけた、その結末は――
彼自身が語っていた“作品”と、皮肉なほど重なっていきます。
映像の外でも続く「仕掛け」
本作が印象的なのは、映像だけで終わらない点です。
作中に登場した村上監督は、X(旧Twitter)上でインタビュー後の出来事を示唆する投稿を行っていました。しかも、動画公開より少し前から。
何も知らずに遭遇した人は、かなり混乱したのではないでしょうか。
こうした場外戦まで含めて作品として成立している点に、制作陣の本気を感じます。
「インフェルノ(地獄)」という共通概念についての考察
フェイクドキュメンタリーQシリーズでは、たびたび「インフェルノ(地獄)」という概念が登場します。
今回も、はっきりとは語られないものの、その流れを感じさせる描写が随所にありました。
山という閉ざされたロケーション、意味の分からない儀式、そして“電話をかける”という行為。
どれも直接的な恐怖というより、「取り返しのつかない場所へ近づいている」感覚をじわじわと煽ってきます。
この作品では、幽霊と話せる電話番号=地獄へつながる入口だったのかもしれません。
電話をかけることで、最後の声をそこへ届けてしまう。
そして留守電に残されていた不気味な音声は、すでに辿り着いてしまった人たちの痕跡だった――
そう考えると、よりゾッとさせられます。
あくまで想像の域ですが、こうした“考えたくなる余白”が残されているのも、Qシリーズの魅力ですね。
まとめ|不快なのに、やめられない
本作も約30分と大ボリュームで、非常に見応えがありました。
TXQ FICTIONシリーズが盛り上がる一方で、Qシリーズはやや更新ペースが落ちていますが、この重苦しく、不快で、胃の奥がキリキリするような感覚はやはり唯一無二です。
特に今回は、「心霊ドキュメンタリーを再現する」だけでなく、別のアプローチでも恐怖を成立させられることを見せつけられました。
また一つ、とんでもないものを見せられてしまった――
そんな後味の悪さこそが、フェイクドキュメンタリーQの魅力なのかもしれません。
