テレビ東京で放送されたフェイクドキュメンタリーシリーズ番組「TXQ FICTION」。
本シリーズは、数々のモキュメンタリー作品を手がけてきた大森時生氏と、YouTubeホラー界で人気を集める「ゾゾゾ」や「フェイクドキュメンタリーQ」に関わる皆口大地氏がプロデューサーを務めています。
放送前からホラーファンの間で注目を集めていた本作。
本記事では、ホラー作品を長年視聴してきた筆者の視点から、第1弾『イシナガキクエを探しています』のレビュー・考察をします。
今回は、最終回となる第4話について語っていきたいと思います。
執念の捜索者・米原実の「不可解な死」
第4話は、55年間もイシナガキクエさんを探し続けていた米原実さんが、田んぼの中で焼死体として発見されるという衝撃のニュースから幕を開けます。
現場に残された違和感
警察は「自殺」と断定しましたが、遺体の近くにはポリタンクとライターが落ちていました。しかし、番組が追ってきた米原さんの姿を知る視聴者からすれば、なぜ「あと少し」というところで彼は自ら命を絶たねばならなかったのか。この死こそが、物語の最大の転換点となります。
暴かれた37年前の「嘘」:イシナガキクエは死んでいた?
第4話の最も重要な証拠の一つが、匿名希望者から送られてきた37年前のビデオテープです。
そこには、若かりし日の米原さんが「キクエがもうこの世にいないことを確認してほしい」という言葉を聞いている姿が映っていました。米原さんは、彼女が亡くなっていることを知った上で、55年間「生存している体(てい)」で探し続けていたことになります。この「目的の乖離」が、本作を単なる行方不明者捜索から、別の恐ろしい儀式へと変質させます。
「措置」と「代理人」:残された音声の戦慄
霊能者(あるいは祈祷師)と思われる稲垣さんの留守番電話に残された米原さんの音声が、パズルのピースを繋ぎます。
「一体見つけましたので、措置の方をお願いしたく…代理人の方は私の方で用意しておきます」
ここで語られる「一体」とは、遺体のことなのか、あるいは「イシナガキクエ」という概念の依代なのか。そして、映像には数字が書かれた女性たちの写真が次々と映し出されます。26番という番号が振られた写真は、石長菊恵が「単一の個人」ではなく、システム化された「番号付きの何か」であった可能性を強く示唆しています。
映像のメタ解析:現場に残された「イシナガキクエ」
スタッフが米原さんのもう一つの家(空き家)を訪れた際、そこには「霊界物語」などの書物と、番号のない写真が残されていました。
その写真に写る女性は、目隠しをされ拘束され、口から「何か」を吐き出しています。この番号のない女性こそが「オリジナルのイシナガキクエ」であり、これまで番組が探していた(あるいは「措置」してきた)のは、その代わりとなる「代理人」たちだったのではないでしょうか。

結論:米原さんの最期が意味するもの
ラストシーン、米原さんが亡くなった日の夜に撮影された遠くの火。私たちはそれを米原さんの自殺の火だと思って見ていましたが、これまでの文脈を辿ると、それは「最後の措置(供養あるいは封印)」だったとも受け取れます。
総評:モキュメンタリーとしての完成度
本作は「行方不明者捜索」というテレビの定番フォーマットを逆手に取り、視聴者を「共犯者」に仕立て上げる構造が見事でした。
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専門性: 実際のニュース映像のような質感と、トーンを抑えたナレーションがリアリティを底上げ。
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信頼性: 提示されるビデオテープや音声記録といった「一次資料」の使い方が、フィクションの枠を超えた恐怖を生んでいる。
最後に:残された謎
動画の最後に映る、あの「火」の前に立っていたのは、本当に米原さん一人だったのでしょうか。そして、今もどこかで「次の番号」が振られているのではないか……。
まだ視聴していない方は、ぜひご自身の目で、この底知れぬ恐怖を確認してください。