共通テストで揺れ、私大受験を経て、倍率急上昇の本命・公立大学前期試験へ。長かった受験生活も、いよいよ結果が出る日を迎えました。
合格発表は、親にとっても特別な瞬間です。涙が出るほど嬉しい時間になるのか。それとも、静かに現実を受け止める日になるのか。
ただ、我が家の合格発表日は、感動だけでは終わりませんでした。結果を確認したその直後から、アパート契約、家族への連絡、入学準備と、現実が一気に押し寄せてきたのです。
今回は、そんな“受験家庭のリアルな合格発表の日”を振り返ります。
※過去記事はこちら
下宿先で迎えた、運命の瞬間
いよいよ迎えた、合否発表の日。
結果は午前10時にオンラインでの発表でした。私はその日、仕事を休み、息子の下宿先まで駆けつけました。
「一緒に結果を見るため」――もちろんそれが一番の理由です。でも、それだけではありません。
この日は、合格していたらすぐに動かなければならない“実務の日”でもありました。
仮契約していたアパートへの連絡。
夫や祖父母たちへの報告。
すでに入学金を振り込んでいた私立大学の辞退確認。
そして、新生活への準備。
つまり私は、願掛けのような気持ちで休みを取っていたのです。
発表前から落ち着かない母
息子は比較的静かでした。でも私は朝から落ち着きませんでした。
スマホの充電確認。
必要書類の確認。
不動産会社の電話番号確認。
私立大学の入試要項まで読み返していました。
合格したらどう動くか。そのシミュレーションばかりしていた気がします。
不合格だった場合のことは、怖くてあまり考えられませんでした。
親というのは、どうにもならない時ほど、できることを探してしまうものです。
一つずつ番号を追う、長すぎる時間
10時を少し過ぎてから、息子は自分のスマホで大学のHPを開きました。画面には、PDF形式で合格者番号が並んでいます。
学部を確認し、息子の受験番号に近づくにつれ、空気が変わっていくのが分かります。
一つ一つ番号を追う。連番のところもあれば、突然いくつも飛ぶところもある。そのたびに心が上下しました。
「次にあるかもしれない」
「いや、飛んだ……」
そんな感情の繰り返し。そして、いよいよ息子の番号のゾーンへ。正直、吐きそうなくらい緊張していました。
雄叫びと抱擁――すべてが報われた瞬間
その瞬間でした。「うおおおおお!!」
息子の雄叫びが部屋に響きました。
画面には、確かに息子の番号がありました。
私は思わず「やったー!」と叫び、気づけば抱き合っていました。
共通テスト後に揺れた気持ち。
倍率急上昇の不安。
前期試験後の暗い表情。
その全部が、一気に報われた気がしました。
胸の奥が熱くなり、でも体の力は抜けてしまい、言葉にならない安堵が込み上げてきました。
喜びの30分後、現実は一気に動き出す
感動の余韻に浸っていたいところでしたが、そうもいきません。
仮契約していたアパートには、正午までに連絡しなければならなかったのです。
このアパート契約については、またどこかで詳しく書きたいほど大変でした。
大学周辺の物件は完全に出遅れており、空室待ちのキャンセル待ち、そのまたキャンセル待ちまで出ている状態。
それでも合格者数は限られているため、不動産会社も毎年この時期は戦場なのだと思います。
不合格なら連絡不要。事前に受験番号を伝えていたので、連絡がなければ大学のホームページなどで確認する仕組みだったのでしょう。
合格発表から30分ほどして、ようやく私は電話をかけました。
不動産会社の一言に、思わず涙腺が緩む
電話口では、受験番号、学部、仮契約内容、今後の流れ、そして当日中に振り込む手付金の案内まで、一通り確認が進みました。
この不動産会社は学生専用アパートを多く扱っていて、きっと毎年こうした対応に慣れているのでしょう。
テキパキと、でも丁寧に話が進んでいきました。
そして、最後に担当の方が少しゆっくりした口調で、こう言ってくれたのです。
「最後にお母さま、この度の合格、本当に、おめでとうございます。」
その一言が、胸にじーんと沁みました。
営業トークだったのかもしれません。でも、あの時の私には、何より嬉しい言葉でした。
親として張り詰めていた気持ちが、そこでふっと緩んだ気がします。
信じられない息子と、現実的な母
一方、息子はまだ現実味がない様子でした。
床に寝転がる。
部屋の中をうろうろする。
急に立ち止まる。
とにかく落ち着かない。
それもそのはずで、本人はあまり手応えを感じていなかったからです。
「本当に受かったの?」そんな気持ちだったのでしょう。
私はその横で、電話、連絡、書類確認、振込準備。
受験生本人と母親では、合格直後に見ている景色がまったく違うのだと感じました。
親だけが知っている努力の重み
私はただ、「本当によく頑張った」と思いました。
結果ではなく、その過程です。
眠そうな朝。
模試に落ち込んだ日。
口数が少なくなった時期。
何も言わず机に向かっていた背中。
そういう姿を全部見てきたのは、親です。
だからこそ、この合格には特別な意味がありました。
終わったという実感と、次への一歩
嬉しさの中にあったのは、強い安堵感でした。
長かった受験生活が、終わった。
でも同時に、新生活のスタートでもあります。
入学手続き、引っ越し、入学準備。やることは山ほどあるのに、その日は全部うれしい作業に思えました。
親としての大きな一区切り。そんな一日だったように思います。
次回予告(最終話)
受験が終わり、進学先も決定。けれど、本当の「プチ卒母」はそこから始まりました。
子どもが離れていく寂しさ。うれしいはずなのに、胸にぽっかり空いた穴。
そして、親として新しく始まる関係。
最終話は――「プチ卒母――離れて気づいた、親であるということ」
大学受験編、いよいよ完結です。