高校生男子の門限とお泊まり、どう決める? 第3話 門限9時を守れない!両親が抜き打ちで待っていた夜

「また今夜も遅かったよ……。」高校1年生の息子と一緒に暮らしていた母から、そんな連絡が届くことが増えていました。

前回お話ししたように、体育祭の打ち上げをきっかけに、我が家では「門限は夜9時」というルールを決めました。なぜ9時なのかも息子と話し、本人も少し不満そうではありましたが、一応は納得。

これで一件落着。……とは、なりませんでした。

高校生には、高校生の付き合いがあります。部活が終わっても、先輩の話に付き合いたい。友達とコンビニに寄りたい。みんながまだ一緒にいるのに、「俺、門限だから帰るね!」と一人だけ抜けるのも、なかなか難しかったようです。

気持ちは分かる。分かるけれど、約束は約束。

そして我が家の場合、門限を守ってほしい理由は、息子の安全だけではありませんでした。


「また遅かったよ」と祖父母から届く連絡

息子は高校3年間、学校に通いやすい祖父母宅で暮らしていました。私たち夫婦は離れて暮らしているので、日々の帰宅を見守ってくれていたのは祖父母です。

だから、息子の帰りが遅くなれば、当然心配するのも祖父母。「まだ帰ってこない。」「今日も9時を過ぎた。」そんな連絡が、私のところへ届きます。

私から息子に言えば、「分かってる。」「今日はちょっと遅くなっただけ。」おそらく息子には、門限を破ってやろうという気持ちはなかったのだと思います。先輩と話していたら遅くなった。友達に付き合っていたら遅くなった。一つ一つは、それほど大きな理由ではありません。

でも、それが続くと話は別です。私としても、「9時って決めたよね?」となります。

祖父母からは相談が来る。息子に話しても、また遅くなる。離れて暮らしているので、実際の様子は見えない。正直、この頃の私は少々参っていました。


門限9時は、祖父母の生活を守る時間でもあった

我が家が門限を9時にしたのには、息子の安全以外にも大きな理由がありました。

息子を預かってくれている祖父母の生活です。

当時、祖父母はどちらも70歳を超えていました。幸い二人とも元気で、祖父は仕事にも出ていました。

祖母はとても面倒見がよく、毎朝5時に起きて息子のお弁当を作ってくれます。料理も得意なので、夕食もできるだけ手作り。育ち盛りの高校生だからと、栄養のことまで考えて食べさせてくれていました。

本当にありがたいことです。

でも、息子の帰宅が遅くなると、祖母の生活もその分後ろへずれます。夕食を温め直す。揚げ物があれば、できるだけ揚げたてを食べさせようと、息子が帰る直前に揚げてくれる。

だから祖母にとって、「今日は何時に帰ってくるの?」は、とても大事なことでした。

しかも息子と暮らす前まで、祖母は夜9時にはベッドに入る生活をしていました。門限の9時を過ぎても帰ってこなければ、当然眠れません。

「まだ帰ってこない。」「何かあったんじゃないか。」帰宅が遅くなればなるほど、睡眠時間だけではなく、気苦労も増えていきます。その疲れが、少しずつ見えるようになっていました。

一緒に暮らしていれば、本来は私たち親ができたことです。でも息子は、自分が希望した高校へ進学するために、祖父母宅から通学する道を選びました。

そのために祖父母は生活を変えて、孫を受け入れてくれた。

だから私は息子にも、「自分の高校生活は、おじいちゃんとおばあちゃんの協力があって成り立っているんだよ」ということは、きちんと分かっていてほしいと思っていました。

門限は、息子一人だけの問題ではありません。一緒に暮らしている人の生活にも関わる約束だったのです。


ある日、夫と「抜き打ち」で行ってみることにした

そんなある日のこと。その日は部活がありませんでした。

息子からは、「友達が髪を切りに行くから、ついていく。」と聞いていました。

そして、帰りは遅くなるかもしれない、と。

そこで夫と相談しました。「今日、実家に行ってみようか。」

息子には言いません。いわゆる、抜き打ちです。今考えると、なかなか怖いことをする親です(笑)。

でも当時は、電話で何度言っても同じことの繰り返し。祖父母からの相談も続いていました。

一度、直接顔を見て話した方がいいと思いました。その夜、私たちは祖父母宅で息子の帰りを待ちました。


9時45分。玄関を開けた息子が固まった

9時前には、息子から祖母へ、「遅くなる。」と連絡が入っていたそうです。連絡をしたこと自体は、一歩前進です。

でも、門限は9時。9時を過ぎても帰ってきません。そして、息子が帰宅したのは、夜9時45分。

玄関を開けて、家の中に入ってきた息子。そこにいるはずのない私たち夫婦を見つけた瞬間――。

顔が固まりました。「えっ……。」言葉にしなくても分かります。「ヤバい。怒られる。」完全にそんな顔でした。

あのときの息子の表情は、今でもよく覚えています。


最初に叱ったのは夫でした

息子が帰ってきて、まず話をしたのは夫でした。かなり厳しく叱りました。

門限を決めたのに、守らない。しかも、一度ではありません。夫としても、そこはきちんと言っておかなければならないと思ったのでしょう。息子も、この日はさすがに神妙な顔をしていました。

ただ、私たちも、「9時を過ぎたから怒る。」だけで終わらせたくはありませんでした。

そこで、改めて話しました。なぜ門限を決めたのか。なぜ帰ってこないと祖父母が心配するのか。

自分の帰宅が遅くなれば、祖母は寝ることができない。朝5時には起きて、自分のお弁当を作ってくれている。夕食だって、帰宅時間に合わせて用意してくれている。

そして、友達との付き合いが大切なのは分かる。先輩との関係もある。高校生になれば、自分の世界が広がっていくことも分かる。

でも、「友達との付き合い」と「家族との約束」は、どちらか一つを選ぶものではない。その両方とうまく付き合ってほしい。そんな話をしました。


門限を決めたのは、信用していないからではない

もう一つ、息子には伝えました。

私たちが門限を決めたのは、息子を信用していないからではありません。

高校生になれば、親の目が届かない場所へ行くことも増えます。行動範囲も広がります。友達との世界も広がります。

だからこそ、まだ高校生のうちは、夜間の事故やトラブルなど、親として避けられる危険からはできるだけ守りたい。そのための「9時」でもありました。

もちろん、門限があれば何も起きないわけではありません。9時までなら絶対に安全というわけでもありません。

それでも、「この時間までには帰る」という一つの基準があることで、本人も、祖父母も、離れて暮らす私たち夫婦も、同じところから考えることができます。

我が家にとって門限9時は、息子を縛るためだけの時間ではなく、息子の安全と、一緒に暮らす祖父母の生活を守るための共通ルール

だったのだと思います。


それでも高校1年生。祖母が始めた「門限カレンダー」

この一件があってから、息子の帰宅時間は少し落ち着いたように思います。

そして、その後。一緒に暮らしていた母が、ちょっと面白いことを始めました。息子が門限を守って帰ってきた日に、カレンダーへ印をつけるようになったのです。

「今日は守れた。」また一つ。「今日も守れた。」また一つ。

すると息子も、その印が増えていくのがなんだか楽しくなったようです。

あれだけ、「友達が……」「先輩が……」となかなか帰れなかったのに、カレンダーに印が増えるようになると、比較的きちんと帰ってくるようになりました。

高校生になって、親元を離れて暮らしている。見た目もどんどん大人に近づいていく。でも、こういうところは、まだまだ子どもなんだな。少し微笑ましく思いました。

厳しく叱る父。理由を説明する母。そして、カレンダーに印をつける祖母。振り返ってみると、みんなやり方は違いました。

でも、「無事に帰ってきてほしい」という思いは同じだったのだと思います。


ルールは、決めただけでは守れない

第2話では、「なぜ9時なのか」を親子で話し、我が家の門限を決めました。

でも今回改めて思うのは、理由を話したからといって、すぐに完璧に守れるわけでもないということです。

高校生には高校生の世界があります。友達との付き合いもあれば、先輩との付き合いもある。親には簡単に思える、「9時になったら帰ればいいじゃん。」が、本人にとっては意外と難しいこともある。

だから、守れなかったときに、「約束したでしょ!」だけで終わらず、なぜ守れなかったのか。どうしたら守れるのか。そして、その約束が誰のためにあるのか。

そこを一緒に考えることも必要だったのだと思います。

我が家の場合、それが抜き打ち訪問だったり、祖母の門限カレンダーだったりしました。

決してスマートな方法ではありません。でも、我が家なりに試行錯誤した結果です。そして少しずつ、息子にも変化が見えるようになりました。


次に試されたのは、夏の花火大会

門限を守れる日が増えてきた息子。そんな中、次にやってきたのが夏の花火大会でした。

もちろん、友達と行きたい。そしてもちろん、我が家の門限は夜9時のまま。

花火大会の途中で、自分だけ帰るのか。それとも、みんなと最後までいるのか。

このとき息子は、私が思っていた以上にきちんと「門限9時」と向き合ってくれました。

次回は、友達より一足先に花火大会を抜け、自転車で帰ってきた息子の話です。

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