今回私がご紹介するのは、ウェス・アンダーソン監督の名作「グランド・プダペスト・ホテル」。
ヨーロッパ随一の超高級ホテル、グランド・ブダペスト・ホテルを舞台に、“伝説のコンシェルジュ”グスタヴ・Hとベルボーイ見習いの少年ゼロが、とある殺人事件の解明に奔走するというサスペンスなストーリーがコメディタッチに描かれています。
なんとこの作品、アカデミー賞を4部門受賞しているほか、ゴールデングローブ賞の映画部門作品賞、ベルリン国際映画祭審査員グランプリも受賞しているんです!
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あらすじ
映画冒頭、とある作家が残した「グランド・ブダペスト・ホテル」という1冊の本を少女が開いたことで、物語は過去へと戻っていきます。
そして舞台は1968年へ。
後に「グランド・ブダペスト・ホテル」の作者となる作家が、とあるホテルに宿泊に来ていました。そのホテルこそ、かつて名門中の名門と言われた最高級のホテル「グランド・ブダペスト・ホテル」。時代とともにその人気は無くなり、今では全盛期の頃の活気は皆無です。そんな落ちぶれたホテルで、作家は1人の老人と出会います。その老人はこのホテルでオーナーを務めるゼロ・ムスタファ本人でした。
ゼロは作家を食事へ誘い、なぜこのホテルを継ぐことになったのか、このホテルでいったい何が起こったのかを語り聞かせ始めるのでした。
見どころ
絵本のような世界観
この映画の見どころの1つが、色彩豊かでポップな画作りだと思います。
建物や衣装デザイン、家具など作品内に出てくる色んな物がカラフルで可愛くて、どこを切り取ってもまるで絵画のようです。
また、画作り以外にも注目してほしいのが演出の部分。
この作品は時間軸が1932年、1965年、1985年と3つに分かれているんですが、その時代に合わせて画角が変わっていきます。
画角で時代感を表現する方法は観ていてとても斬新だなと思いました。
他にも、ベルボーイ見習い時代のゼロが被っている帽子に「LOBBY BOY」という文字が冗談みたいに大きく書かれていたり、基本的にアングルが真横や真上、真下だったりと、絵本を見ているかのような感覚が味わえる演出が所々に散りばめられています。今までに観たことのない作風でした!
紙芝居のごとく淡々と進んでいく物語
もちろん物語の内容も、可愛らしい世界観に引けを取りません!
物語は、殺人事件・相続争い・泥棒・刑務所からの脱獄・追跡劇・銃撃戦・ラブロマンスetc…様々な内容が重構造になっており、目まぐるしく移り変わっていくのですが、本のようにパートごとに分けられているので、これらがごちゃごちゃになることなく淡々とテンポ良く進んでいきます。
途中、猫の死亡シーンがあったり生首が出てきたり、ドアに挟まれて指がちぎれちゃったり、僅かではありますがグロシーンが出てきます。それまで可愛い世界観に惹かれて観ていた私は少しびっくりしてしまいましたが、おしゃれで可愛い世界観との温度差が逆に魅力的だと思いました。
割りとすぐに人が死んでしまったり、普通そうはならんやろ!的なシーンが多くありますが、淡々とした語り口のグスタヴと応援したくなるゼロのシュールでコミカルな掛け合いが良いアクセントになって、そういったシーンを不快な思いをせずに観ることができました。
話の展開が変わるごとに音楽や画面の色調などが変化していくところも面白かったです!
グスタヴとゼロの絆
タイトルは「グランド・ブダペスト・ホテル」ですが、ホテルはあくまで舞台のひとつであり、その物語のほどんどはグスタヴとゼロの冒険譚のような感じです。
序盤のグスタヴは、ゼロに対して「お前なんて雇った覚えないけど、まぁ付いてこい」って感じで、ただの従業員として色々教えていくんですが、ゼロはご贔屓していたセレブなマダムが亡くなってからの遺産相続を巡る闘いや、殺人容疑をかけられて追われたりトラブルに巻き込まれるグスタヴを見放さず守り抜きます。
物語終盤では、お互い親友のような家族のようななんともいえない温かい雰囲気を感じます。
最後に
物語のエンディングは、温かみを少し残しつつも悲しさを感じながら迎えます。しかし、余韻にたっぷり浸れる素晴らしい作品でした!
サスペンスもコメディーもしっかり楽しめて、アクション要素もあるワクワクとした飽きさせないストーリーなので、まだ観たことがない高品質なコメディ映画を求める人には是非ともおすすめしたい作品です!
また、この作品でウェス・アンダーソン監督の作り出す世界観に興味をもった方は、ぜひ他の作品も観てみてください!
ウェスアンダーソン沼にハマること間違いなし!