私が今回ご紹介するのは、2025年2月7日に公開された、映画「ファーストキス 1ST KISS」。
主演を松たか子さん、松村北斗さんが務め、「花束みたいな恋をした」「怪物」の脚本家・坂元裕二さんと「ラストマイル」「グランメゾン・パリ」で監督を務めた塚原あゆ子さんがタッグを組んだ、完全オリジナルストーリーで描かれています。
本作は、公開されるやいなや「最高に感動した」「何度観ても泣いてしまう」といった口コミが広まり、公開から2ヶ月経過しているにもかかわらず、現在「全国映画動員ランキングトップ10(2025/4/11~4/13/興行通信社発表)」の9位にランクインしたりと大ヒットを記録しています!
これまで恋愛映画というジャンルに対して「わざわざ映画館まで観に行かなくても…」と思っていたんですが、坂元裕二脚本×塚原あゆ子監督という最強制作陣に加えて主演が松たか子!これは絶対おもろいやつだ!と、期待値高めで観に行ってきました。
早速ですが、本作の見どころをご紹介していきます!
あらすじ
結婚して15年目、ある日カンナ(演:松たか子)は夫の駈(演:松村北斗)を事故で亡くしてしまいます。駈とは長い間不仲で離婚話も出ていました。残されたカンナは第二の人生を歩もうとしていた矢先、仕事終わりの帰宅途中で突然15年前へタイムトラベルする力を手に入れます。そこで15年前の駈と出会い、再び駈に恋をしたカンナは、事故で亡くなってしまう未来を塗り替えようと奮闘しますが…。
坂元裕二節が炸裂
本作の見どころの1つが、やはり坂元裕二脚本だと思います。
過去にご紹介してきたドラマ「カルテット」や「大豆田とわ子と三人の元夫」でも、脚本が紡ぎ出す“名言”的セリフや登場人物たちの掛け合いの面白さに惹かれる部分が多くありました。
本作でも、カンナが放つ結婚観についてのセリフに“坂本裕二節”が炸裂していました。
例えば、
「恋愛感情と靴下の片方はいつかなくなります。」
結婚したことによる恋愛感情の喪失を靴下と絡めて表現されていますが、この靴下というアイテムは作品全体を通してもポイントとなっているそうで、劇中靴下にまつわる様々な描写が盛り込まれていました。
演出や撮影の裏側について書かれた「『ファーストキス』を紡ぎ出す12の掌編」というミニコラムを読むと、塚原監督はカンナ役の松たか子さんに、「カンナは靴下を共有物だと思っている。」と話しています。暮らしを感じさせる、足元を温めてカバーするアイテムを生活の中で共有するというところから、カンナの結婚観がどういうものなのか、さらに理解が深まります。
この他にも
「結婚すると解像度が上がります。見逃していた欠点が4Kになって見えてきます。」
「好きな所を発見し合うのが“恋愛”、嫌いな所を見つけ合うのが“結婚”」
という具合に、「結婚とは何か」を考えさせられるセリフが。
特に“見逃していた欠点が4Kになって見えてきます。”というコミカルな表現が、坂元さんらしさを感じて個人的に好きなセリフです。
松たか子と松村北斗が生み出すリアルな空気感
主演の松たか子さんと松村北斗さんは今回が初共演らしいのですが、そんなことは一切感じさせない自然な演技で、観ているこっちもスッと映画の世界観に入り込めました。
15年前の夫に再び恋をしてドキドキしたり、未来を変えようと奮闘したり様々な表情を見せるカンナを、成熟した演技で魅せる松たか子さん。若き日の夫・駈の無邪気さや純粋さを真っ直ぐに演じきる松村北斗さん。この二人の演技が交錯しているからこそ物語に深みと感動が与えられるんだなと感じました。
特にすごいなと思ったのが、二人がまだ付き合っている頃、仲良しだった頃の回想シーンと不仲で離婚間近な現在との対比。15年前の付き合っている頃はメイクや照明も関係しているとは思いますが、本当に年齢が遡ったんじゃないかと思うくらい二人とも若々しく見えるんです!
そして駈がプロポーズするシーンはこっちまで微笑んでしまうくらい幸せなシーンなんですけど、離婚間近の二人はその温かさが嘘みたいに冷たい…!!朝ご飯を用意する時、二人ともキッチンには立つけど会話は一切なし。それぞれで食べるものを準備して別々の場所で食べます。そのシーンがもう本当にゾッとするくらい冷たくて、離婚間近の夫婦ってこんな感じなのか…とリアルすぎる空気感に心がギュッとなりました。
初共演とは思えない見事なコンビネーションでした。
人間関係の深層に迫るテーマ
本作は、単なるラブストーリーにとどまらず、人間関係の複雑さや、時間とともに変化する感情のあり方について深く掘り下げられています。結婚生活の中でのすれ違いや、過去の選択が現在に与える影響など、自分の経験と重ね合わせながら観ることでより深く物語にのめり込むことができました。
タイムトラベルというファンタジーな設定ですが、「今を大切にする」というテーマを際立たせる仕掛けとしてとても効果的だと思いました。
最後に
「ファーストキス 1ST KISS」は、タイムトラベルというファンタジーな要素を取り入れながらも、人間関係のリアルな感情が丁寧に描かれています。坂元裕二脚本のコミカルさや俳優さんたちの自然な演技、深いテーマ性がバランスよく融合していて、ラブストーリーとしてだけでなく、人間ドラマとしてもかなり見応えある作品でした!
観終わった後は、パートナーに対してもっと優しくしようと思える、そんな映画です。
皆さんもぜひ観てみてください。