神社の鳥居や拝殿に架けられているしめ縄は、神様が降りた神聖な場所を示すもので、しめ縄が張ってある場所には不浄のものや悪霊は入れないとされています。
年末になると、日本各地の神社で新年を迎えるための新しいしめ縄が架けられたというニュースをよく目にします。大きな神社では氏子などを中心にその地域でしめ縄を準備できますが、少子高齢化に伴いそれが難しい神社もあるのが現状です。私が以前取材した神社は、農村地域にありながら全国に500もの摂社・末社がある総本社で、そこには独自のしめ縄保存会が存在します。70代~80代の地域の方達20人程で、総本社の大しめ縄はもちろん、他の神社からも注文が来て、毎年大小30個ほどのしめ縄をその土地でとれた稲藁で作っています。
しめ縄は通常、新年を迎えるために1年ごとに取り換えられますが、今回ご紹介する富山県射水市にある株式会社折橋商店では、30年取り替え不要のしめ縄を製造していて、全国の神社からの問い合わせが増えているそうです。
この会社は明治43年創業で、もともと富山県新湊市で漁業用の藁縄を作っていて、その後藁縄製の定置網の製造を手がけるようになりました。
定置網の素材が藁縄から強度の高い化学繊維を使ったロープに変わり、神社のお世話をしていた地元の漁師さんから、「折橋商店の化学繊維ロープを作る技術で、合成繊維のしめ縄を作れないか?」と相談されたのをきっかけに、昭和60年ごろから試行錯誤を重ね、合成繊維を使ったしめ縄作りをしています。
折橋商店では高密度合成繊維を使用していて、この素材は耐久性・防水性・耐寒性に優れているので、しめ縄が腐るのを防ぎ、汚れがつくのも防ぐので、30年間取り替えなくても美しい見た目も保てます。
また、ロープは通常3本の繊維を編み上げて作るのですが、しめ縄に使っている繊維は、編むのではなく繊維を撚ることで、より藁のしめ縄に近い見た目になるようこだわって作っています。
しめ縄は、その年の豊作を神様に感謝するものとして、その年にとれたお米の藁を使って作り上げたしめ縄を、年始を迎える前に架け替えるのが習わしです。なので、30年取り換えないということは習わしに反することになり、賛否両論あると思いますが、高齢化や人口減少に伴い神社のお世話をする方の負担は増えている中、伝統を繋ぐにためにはありの選択だと思います。
材料や習わしが変わっても、根底には伝統や心の拠り所である神社を大事にしたいという想いは変わりません。この会社の動画を見ると、それが良く伝わります。