TBSアナウンサーの安住紳一郎さんが2005年4月からパーソナリティを務める毎週日曜日10時から放送のTBSラジオ番組『安住紳一郎の日曜天国』(以下「にち10」)。残念ながらTBSラジオの電波が届かない地域に住んでいるため、普段はポッドキャストで楽しんでいます。F2層(35歳~49歳 女性)の私が愛してやまない「にち10」のエピソードを紹介していくシリーズです。

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今回取り上げるのは、2009年2月1日に配信された回で語られた「コツンなのか、ゴソゴソなのか」というお話。受験シーズンならではの、なんとも切なく、そしてどこか可笑しい思い出です。

ちょうど今、我が家でも大学受験を経験したばかり。今年、息子が大学受験を終えたばかりの私は、この話を聞きながら何度もうなずいてしまいました。

受験生にかける言葉の難しさ

番組の冒頭で安住さんは、2月は受験シーズンであることに触れます。
この時期になると、ラジオやテレビでは必ず「受験生のみなさん、頑張ってください」という言葉が流れます。もちろん、その言葉に悪意があるわけではありません。しかし安住さんは、こんな本音をこぼします。

「でも、そんな言葉、受験生には実は届かないんだよな」

受験生にかける言葉はとても難しい。安住さんはそれを「朝青龍へのインタビュー並みに難しい」と例えていましたが、この独特の言い回しがいかにも「にち10」らしいところです。

受験を経験した人なら分かると思いますが、試験直前の時期は、応援の言葉さえも少し重く感じることがあります。家族もまた、どこまで気を遣えばいいのか分からない一年を過ごすものです。

安住紳一郎、受験に2度失敗

安住さんは大学受験で「2度失敗した」と語っています。つまり浪人を経験しているということです。本人の言葉によると、人生で「時間を戻したくない時期」があるとすれば、それは受験の頃だそうです。

当時は今よりも多くの大学を受験する風潮があり、安住さんもかなりの数の試験を受けたとのこと。
結果は、1年目は全滅。

2年目には12校ほど受験したそうですが、第一志望、第二志望と落ち続け、最後に残ったのが第三志望の大学でした。

ここから、今回のエピソードの核心が始まります。

合否は「郵便の音」で分かる

当時、合否通知は郵便で届いていました。今のようにネットで結果を見る時代ではありません。

安住さんの部屋の玄関には、ドアの外側に郵便受けがあり、内側には金属製の受け皿がついていたそうです。そこに郵便物が落ちる音で、ある程度結果が分かると言います。

不合格通知は、封筒の中に紙が1枚だけ。そのため、郵便受けから落ちると「コツン」という軽い音がする。

一方、合格通知は入学案内や書類がたくさん入っているため、厚みがあります。郵便受けから押し込まれるように入るので「ゴソゴソ」という音になる。

つまり、郵便受けの音を聞くだけで、合否がだいたい分かってしまうのです。

安住さんは、この「コツン」という音を何十回も聞いたと語っていました。朝10時から11時頃、郵便屋さんのバイクの音がして、そして

「コツン」

あの悲しい音が玄関に響く。この描写が、なんともリアルでした。

第三志望の結果を待つ日

第二志望まで落ち、残るは第三志望のみ。もしここも落ちれば、また一年浪人です。

その日、安住さんは祈るような気持ちでテレビを見ていたそうです。番組は懐かしの『100万円クイズハンター』。

すると外から、郵便バイクの音が聞こえます。

「来た」

そう思った瞬間、頭の中はこうなります。

コツンなのか。ゴソゴソなのか。

もし「コツン」なら不合格。「ゴソゴソ」なら合格。

「頼む、ゴソゴソであってくれ」

そう願いながら耳を澄ませていると、郵便受けから聞こえた音は…

コツンでもゴソゴソでもない音

聞こえてきた音は、「ポトリ」だったそうです。

コツンでもない。ゴソゴソでもない。

安住さん自身も「聞いたことのない音」だったと語っています。

玄関を開けてみると、そこには第三志望の大学からの封筒。厚すぎず、薄すぎない、中途半端な厚み。

そして中身を確認すると、そこには補欠合格のお知らせ。

つまり、重量感も結果も「真ん中」。

安住さんはこれを「鉛色のメダル」と表現していました。この言い回しがまた、「にち10」らしい絶妙なユーモアです。

補欠合格のその後

補欠合格の場合、本人が希望すれば入学できる仕組みだったそうで、安住さんはその大学へ進学することになります。

しかし入学後、思わぬ出来事が待っていました。

クラスで出席を取るとき、名前はあいうえお順で呼ばれます。「安住」という名字なら、本来かなり早い順番のはず。ところが、なかなか呼ばれません。

気がつけば、順番は最後の方へ。そして次に呼ばれたのは、留学生の名前でした。

どうやらその学校では、

・正規合格
・留学生
・補欠合格

というグループで名簿が分かれていたらしく、安住さんは「補欠枠」として最後に並んでいたのです。

結果として、周囲からはしばらく「日本語がとても上手な中国人留学生」だと思われていたそうです。

このオチまで含めて、さすが安住紳一郎さんの話術だと感じました。

今はネットで合否が分かる時代

ところで、今回このエピソードを聞いて、私はふと我が家の受験を思い出しました。

今年、息子が大学受験を終えました。しかし今は、ほとんどの大学がインターネットで合否を発表します。

発表時間になると、スマートフォンやパソコンで結果を確認する。クリックひとつで「合格」「不合格」が分かってしまう。

便利になった一方で、あの郵便の音のようなドラマは、もう生まれにくいのかもしれません。

それでも、合否を待つ時間の緊張感は、今も昔も変わらないものだと思います。

※ちなみに、我が家は「コツン」も「ゴソゴソ」もどちらも届く結果となり、「ポトリ」はなかったです。

受験生のみなさんへ

番組の最後、安住さんは改めてこう言いました。

「受験生のみなさん、頑張ってください」

先ほど「言葉は届かないかもしれない」と言っていた安住さんですが、それでもやはり、伝えたかったのでしょう。

コツンの音。
ゴソゴソの音。
そして、ポトリという予想外の音。

受験には、いろいろな結果があります。けれど、その経験が人生のどこかで笑い話になる日が来るのもまた事実です。

受験の季節になるたび、私はこの「コツンなのか、ゴソゴソなのか」という話を思い出しそうです。

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